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​秋山義人の「英国最古の理髪店」

《英国最古の理髪店  トゥルフィット&ヒルがやって来た  8月6日》

 

(1)極めて私的なシェービングヒストリー

 

昔からトラディショナルなウェットシェービングに憧れていた。
映画の一シーンでよく見るシェービングブラシをお湯でぬらしマグに入っている石鹸や、

ボウルやチューブ入りのシェービングクリームをつけて顔をゆっくりとなでるように泡で包み込み、かみそりで剃っていく。
ひげも眠気も消えてなくなり、一日が爽快に始まりそうだ。
毎朝あのようにひげを剃ってみたい、だが日本では理髪店以外にはシェービングブラシを見た事がなかったし、

そもそもシェービングソープなんて売っていなかった。
理髪店にあるシェービングブラシはあまり魅力が無いし、粉石鹸を使うのはどうも海外のシェービングスタイルとは異なる様に思えた。
仕方なくシェービングフォームを使いウェットシェービングを楽しんでいたが、どうもあまり格好良くない。
シェービングブラシの優雅さが出ないのである。
初めてシェービングブラシを買ったのがいつで、どこでかは忘れてしまったが“bristle and badger”と書かれたそのブラシはそこそこの品ではあったものの、

豚毛が混合されたものであり、やはり“pure badger”純粋なアナグマの良質な毛で作られたものが欲しかった。
その頃手に入ったのはオールドスパイスのシェービングソープで私の知る限り普通に入手できる唯一のシェービングソープであった。
しばらくはそのシェービングソープとブラシで剃る時期が続いた。
何せ25年以前のことなので時間の前後関係は忘れてしまったが、
東京プリンスホテル地下のセレクトショップ「ピサ」でペンハリゴンのシェービング用品を

見つけて、木のボウルに収められたソープと”pure badger”のブラシでシェービングをした時にはなんだか自分自身映画の一場面に出ているような気分ですごく

興奮したのを覚えている。
その後初めての海外旅行では英国でシャツをつくることに集中し、ジャーミンストリートでターンブル&アッサーを訪ねた。
以前ピサで採寸してくれた旧知のポール・カス氏に採寸してもらいたかったが、残念ながらオーダーメイドのシャツを作る時間が無く、

既製品を10枚くらい購入。
そのついでに近くにあるPerfumer(理髪店兼ショップ)の「アイヴァンス」(現在のトランパー支店)に出かけた。

トランパー製品が所狭しと置かれた店内はまさにパラダイス。
コロン、ソープ、ブラシ等かなりの数量の製品を購入した。ついでに近くにあるテイラーにも顔を出し、コロン、ソープを購入。
その後何度か英国に行き、その都度シェービング用品を買いあさった。

トランパー、テイラー、ペンハリゴン、フロリス、D.R.ハリス、等で様々な製品を買ってくるのが楽しみの一つになった。
日本にもこれらのショップの製品が一時購入できた。
トランパーはバーニーズNY,D.R.ハリスは青山にあったスウェイン アドニ- ブリッグで、テイラーはポール・スチュアートで、

フロリスは日本橋三越でと言った具合に。
また、ラルフローレンでもシェービング用品があったので、それらを折に触れて購入し、その日の気分で使用する製品を選んでシェービングを楽しんでいる。
残念ながらフロリス以外は今は見つけられない。(でもお取り寄せである)


(2)伊勢丹メンズ館

2003年9月に伊勢丹がリニューアルオープンした。(最近も再度のリニューアルを実行した。)
メンズ館が出来、その後の男性ファッションのリーダー的存在になった。洋服、靴等に関しては高級品がありすぎるので敬遠している。
私は1階の化粧品売り場専門である。男性のグルーミング、シェービング用品が入り口近くに整然と並べられている。
ペンハリガン(昔はペンハリゴンと表記されていたが・・・)やサンタ マリア ノヴェラがあったのはうれしく、クラランスメンにも興味があり、

ほとんどのシェービング用品を試してみた。

ラインアップは結構頻繁に変更され、愛用していたブランドがいつの間にか姿を消しているのは結構不便だった。
だが、その分新しいブランドに期待することが出来た。
ペンハリガンは昔から愛用しており、シェービングクリームが常備されているのがうれしい。
ただ、シェービングソープは置いていないのが残念。
ここのオードトワレは好きで、ブレナム ブーケ、イングリッシュ ファーンは昔からの愛用品だった。
最近は新製品も出ているのでそのうち使ってみたい。シガークラブの親会社が販売元であるアート オブ シェービングもうれしい。
ここではシェービングに関する一切が入手できる。
シェービングブラシ、シェーバー、シェービングソープ、シェービングクリーム、アフターシェーブローション、

それも何種類もの香りで選ぶことが出来るのはうれしい。
私はラヴェンダーとサンダルウッドを気分により使い分けている。アジア系の人に愛用されるサンダルウッドが一番好きだ。
最近はビオテルム、キャロル フランク等も試してみた。

キャロル フランクのプレ&アフター シェーブ オイルとシェービングフォームは抜群に使い心地が良い。
伊勢丹で買い集めたシェービング用品や海外や他の専門店で購入した用品で私の洗面所は大変な状態になっている。
シェービングマグが大きめなものがトランパー2個、フロリス1個、ラルフローレン1個、小さめなものがトランパー2個、

シェービングクリーム用のマグがドイツのメルクールのものが1個。今はシェービング用品が日本では入手できないフランスのロクシタンが1個。
そのほかにもシェービングフォームがビオテルム、デクレオール、キャロル フランク、サンタ マリア ノヴェラ、昔懐かしいオールド スパイス、

それに昔から愛用しているクリニークのクリームシェーブ等、シェービングブラシは20本以上。
ほとんどオタクですが、なかなか1種類に絞りきれないので日替わりで楽しんでいるのが最近の朝の日課。
日本製の粉石鹸も買ってみたが、それなりに使える。何より安い。


(3)トゥルフィット&ヒルとの出会い

1805年開業、世界一古い理髪店トゥルフィット&ヒルのことを知ったのは実はそんなに古いことではない。
シェービング用品オタクの私は色々な雑誌やショップをチェックして新製品の情報は絶えず調べ、入手できるものは絶えず購入し、試してみた。
ある日ホテルニューオータニのダヴィドフショップでシェービングブラシとスタンドのセットを目にした。
英国風のセットはトランパーかテイラーのものかと思い、手にしてみると今まで見たことの無いブランド。
由緒正しそうなトゥルフィット&ヒルと言う名前。だいたい「○○&○○」と言う名前は古そうな伝統的なものを感じさせる。
余談だが「○○&Co.」と書いてある表記に、何故&が入っているか不思議であるが、これは「○○と仲間たち」の会社と言う意味だそうだ。
代表者とその仲間たちが作った会社が株式会社の原点なのである。
それはさておき、今まで聞いたことの無い名前に興味を持ち、早速ネットで調べてみた。
わかったのは「英国王室御用達のヘアカッター、ヘッドドレッサー、そしてウィッグメーカーとして、

1805年10月21日にロンドンのメイフィア地区ロングエーカーにオープンした理髪店」と言うことだ。
何故今まで知らなかったかと言うと、他のPerfumer(理髪店+化粧品屋)はジャーミンストリート近辺に集中しているので、

そこいら辺しか歩いていなかったこと、日本では一度も見たことが無かったからだ。
ネットで見ると商品の点数が多く、たとえばシェービングクリームではサンダルウッド、ラヴェンダー、ココナッツ等の

他に同社のオリジナルのコロンと同じ香りの1805、トラファルガー、グラフトンとかのシリーズがある。

ホームページに写っている本店も由緒正しい、200年の伝統を感じさせる。
これは「must item」だ。絶対に手に入れたい!!
次に英国に行く機会には是非寄ってみたい、あるいはネットで購入してみたいと直感した。一目ぼれである。
調べてみると表参道にある「カミソリ倶楽部」ではシェービングマグを扱っていたので買ってみようとも考えていた。
実物を見たい、いつか「カミソリ倶楽部」へ行かねば。ところがそのマグと思わぬところで遭遇した。
葉巻を吸いにダヴィドフ銀座本店に出かけたところ、近場に「Gravitas & Grace」というセレクトショップがあり、そこで偶然見つけてしまった。
じっくり手にとってみた。トランパーのマグとほぼ同じ大きさだが、ソープを置くところが深くなっているのでブラシで泡を作りやすい構造だった。
フロリスより小ぶりなので場所をとらない(と言っても結構大きい)。買うか否か迷うところだ。
ダヴィドフショップで葉巻を吸いながら置いてあるバブリーな雑誌を手にとってみた。
そこに「英国の伝統のある理髪店が日本に進出」と言う記事があり、トゥルフィット&ヒルが日本に進出すること、

伊勢丹で5月のGWを中心に2週間ほど期間限定発売するとの情報が載っていたのである。
私が見たときには、もう販売期間は終了していた。もう少し早く知っていればと後悔することしきり。
日祭日の伊勢丹は混むので行かないことにしていたら、好機を逸してしまった。
ただし、そのバブリーな雑誌には日本で本格的に展開すると書かれていた。
早速代理店に電話したところ、ご丁寧にサンプル商品を送ってくれ、伊勢丹で取りよせ可能とのことだった。
送られてきたのはシェービングクリームのフルレインジ。そしてコロンの1805のサンプル。
早速使ってみて、特に気に入ったのは1805、グラフトン、トラファルガー等のシェービングクリーム。
早速エレガントな伝統的な香りの1805のシェービングクリームとコロンを注文。ついでに無香料のシェービングソープも注文。
たまたま「Gravitas & Grace」は紳士部門を縮小するとのことで30%offでシェービングマグを購入。

これはトランパーのシェービングソープと大きさが同じ。
適温のお湯で濡らしたシェービングブラシでゆっくりと丁寧にソープ表面をなでるときめ細かなクリーミーな泡が生まれ、

頬にぬると柔らかい幕に覆われた気がしてくる。
8月13日から伊勢丹で本格的に販売されるとのこと。来週には理髪店を併設した旗艦店もできるらしい。
トラファルガー、グラフトン等のコロンとシェービングクリーム等は早急に購入する予定。
シェーバーは日本橋木屋で昔作っていたチタン製のホールダーに木屋がドイツのメルクールから輸入している2枚刃かジレットの5枚刃。
洗面所が狭くなって困るが、毎朝の日課の楽しみが増えそうである。


(4)追加

・電器シェーバーの品質向上も著しい。寝坊したときにはブラウンを使っている。
・007の「Die another day」ではボンドが電器シェーバーを使っていた映画にはスポンサーが付き物。
金の力にはかなわない。これは残念。
スーツもサヴィルロウ仕立てではなくブリオーニになったのは残念。
・ロンドンに行くとジャーミンストリートとサヴィルロウでしかショッピングをしたくない。
・ロンドンにはヨーロッパ各国からリッチな人たちが集まる。
ロシアの成金も。彼等のためにロンドンのデパートでは特選街を充実させているとのこと。
エルメス、グッチ、ヴィトン、アルマーニ、ヴェルサーチ等のブランドが紹介されているが英国のブランドが無いのは英国好きのものには寂しい。

                                                                    

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