​秋山義人の「イギリス紀行②」

第四回
イギリスは高い(4)・・・・蒸留所見学、そして貴族の館

 

第三日目

グレンオードとダルウィニ-である。

蒸留所見学は素人にはなかなか難しい。
ウィスキーを作るプロセスは割合単純である。
大麦をピートで炊きイースト菌を混ぜて釜で蒸留し出てきた液体を樽に詰める。単純に言うとこうなる。
この工程は蒸留所により若干異なるが私のような素人には差がわからない。
蒸留方法の違い、樽の違いで何故味が違うのか…蒸留の問題を研究するにはある程度基礎的な勉強と実践を必要とする。


ひとわたり見学し試飲した後の楽しみは土産屋である。

グレンオードにもダルウィーニーにもお土産屋があった。
両方の蒸留所で本当はウィスキーを買いたかったのだが山内さんに聞くと日本の量販店の方が安いとの事。
そこでお土産用にグラスとかポロシャツを買う。価格はロゴ入りポロシャツ6千円。
プリングルの製品なので品質は良く日本より安い。
グレンオードでは行きつけのバーへのお土産としてミニデキャンターとミニグラスのセットを購入。
これは5,000円くらい。かわいいセットだ。


本当は自分でも欲しかった。

ウィスキーは結局2本買った。
タリスカーの限定品。珍しいが日本のバーなら持っている可能性大。
あとは自分用にTeaninich(ティーニニック)。今まで一度も口にしたこと事がない。
結構おいしい。だが、本音を言うとこれくらいのウィスキーだったら東京でもっと良いものが安く入手可能。
本場よりも安く品数も多い日本は恵まれているが、せっかく本場に行ってもお土産がないのは困る。


昼はボートホテルと言うローカルなホテルでランチ。

サーモンのグリルを頼む。これは良かった。
価格はロンドンと比較すると雲泥の差、フルコース3千円位とリーズナブル。
だが、土地の人にとってはこのようなホテルで食事するのは特別の機会だけとのこと。
スコットランドの田舎に行くと外食するところがないので困る。
日本みたいにファミレスはないしコンビニもない。
不便だが土地の人は不便と思わないのだろうか。


人々の暮らしぶりはどのようなものだろう。

職業、ライフスタイルとか聞いてみたかった。
私みたいに東京と言う大都会が好きで毎晩バーで葉巻を吸い、たまにロンドンに行くとはしゃいでホテルを見物したりバーに行ったり、

そんなことが楽しいと思う人間はスコットランドの田舎には住めない。
でも、居心地のよさそうな家、静かな美しい自然、そんな中で私が考える刺激的な人生とは違う「生」がある。
都会の遊びは刺激的だがなんとなくむなしい。静謐な人生のほうが自己と向き合えるのではないだろうか。
そんなことを考えながら車窓に映る景色をぼんやりと眺めていた。
日本の都会とは対極の世界。夕方当日の宿に着いた。


Drummuir Castle、元貴族の館の迎賓館である。

ここは素晴らしかった。何せ貴族の館である。
鎧があったり肖像画があったり映画で見るのと同じである。
幽霊も出そうである。幽霊といえば世界一幽霊が出る都会はエディンバラだそうだ。
殺戮に殺戮を重ねて都市が出来たので怨念が渦巻いているらしい。
一度お目にかかりたいものだ。


Drummuir Castleは迎賓館なのでウィスキー飲み放題である。

スコットランドが生産する最良のウィスキーがこれでもかというほど棚に並べられている。
レアなものも何気なく置かれている。何から飲めば良いのかわからないまま時は流れる。
悩んだ結果食前には柔らかいCragganmoreを選ぶ。せっかく蒸留所を見に行ったのでやはり飲まねば。
飲んでみるといつもより鮮烈に感じられたのはこの館のなせるわざか。
食前酒を飲んだからには夕食を食べねばならぬ。食べすぎなので一食くらい抜いても良いのだが。夕食はラムのステーキがメイン。

ラムは普段好んでは食べないがここのラムは臭みもなく柔らかくビーフよりも淡白で食べ過ぎた胃にはちょうど良かった。

食後はLIBRARYに移って飲酒。

LIBRARYというのは図書室であるが単に読書のための部屋ではなく来客を接待する部屋のようだ。
私の今回の訪英は短かすぎてイギリスの風俗習慣の一端を垣間見たに過ぎない。
もっと事前調査をして現地に滞在し調べるべきものである。だが、その一端からも少しは想像できる。
LanesboroughのバーはLIBRARYだったしクレゲラヒーでも読書室で飲むのが普通であった。

多分貴族たちは男性の客は読書室に招待したのではないだろうか、と思う。

この読書室にあったウィスキーは何百種類、ご招待なので何でも飲める。
葉巻も吸い放題。


私は珍しいブレンデッドウィスキーのブキャナンを飲んだ。
シングルモルトとは異なり強烈な個性はないがバランスの取れた気品の中に力強さのある素晴らしいウィスキーだった。
現在ではこのようなブレンデッドウィスキーはなかなか見つからない。
葉巻はコイーバのロブスト。これは良かった。相性抜群である。
両者ともエレガントな中に力強さがあり、華麗である。
どうも葉巻にはシングルモルトよりもブレンデッドウィスキーのほうがあわせやすい気がする。極上のブレンデッドウィスキーがほしい。
以前飲んだExcaliburは柔らかくまろやか、芳醇な香りでオヨー・デ・モンテレイのダブルコロナに良く合った品のある組合わせだった。


さて、このDrummuir Castleの私の部屋であるがだだっ広い。

寝室には大きなシングルベッドが二つ。応接セットが一つ。
それから寝椅子(何というのだろう、ソファーベッド?
確かフランス語に特定の表現があった気がする)が一つに小さな机、ここで葉巻をくゆらせたかったが寝室は禁煙。
広さは日本ではジュニアスイート並み。バスルームも広く。バスタブは猫足でなみなみと湯を張ると溺れてしまいそうになる。
バス用品はすべてフロリス。気が利いている。さすが貴族の館だ。
ここのシェービング用品も私の愛用品の一つ。これについては別途シェービング用品購入の際に少しお話させていただく。
上質の酒に上質の葉巻に酔い、部屋に戻りゆったりとしたバスタブにフロリスの上品な香りのバスバブルズを入れお湯を張る。
泡風呂に入り目を閉じる。気持ちよく入浴したあとはバスローブにくるまり、寝椅子に横になる。

夜も更けて極楽極楽。

 

第五回
イギリスは高い(5)・・・・蒸留所でのインタビュー

第四日目

 

前夜あまり飲まなかったので翌朝食前酒を頂戴することとした。

7時の朝食まではまだ間がある。

朝6時、ロイヤル・ロッホナガーのセレクテド・リザーブを飲む。柔らかく品があり華やかなウィスキーだ。
食前酒に最適。というか食後でも食中でも良い。
朝食前にウィスキーを飲むことはめったにあることではない。自堕落。
もう一杯、発売中止になったRare Malt SeriesというボトラーのBRORAが飲みたったのだがさすがに朝食前なので自粛した。
銀座の「バー ON」で見たことがあるので帰国したら早速飲んでみたい一本である。


朝食はバイキング形式。

オートミールが秀逸だった。
おかゆに似ているので久しぶりにご飯を食べたような気がする。
ミルクをたっぷりかけ、大量に食べた。

 

館をあとにクラガンモア蒸留所へと向かった。


蒸留所見学とブレンダーへのインタビューが目的である。
クラガンモア蒸留所は懐かしさを感じた。
2日前に訪問したこと、そしてクラガンモアばかり飲んでいたからだろう。
応接室に案内される。
古色蒼然とした応接室にはウィスキー関係用品が所狭しと置かれており一つ一つに歴史の重みを感じることが出来た。
珍しいボトルもあったが中身はカラだった、残念。


蒸留所を見学。

他の蒸留所とほぼ同様であった(プロが見ると全然違うのだろう)がここの蒸留釜は特徴的で他の蒸留所がスワンネックと

言って文字通り白鳥の首の形をしているのに対しここは釜の上部が滑らかな形ではなくT字型である。
蒸留所の創設者が試行錯誤の上考案した蒸留釜である。
ただし、私のような素人には釜の形の違いが味、香りにどのように影響するかはわからない。
この蒸留所でオールドパー クラシック 18年のブレンダー モーリン・ロビンソンさんのインタビューを行った。
ここは雑誌の取材なので割愛させていただく。
市販の製品を発売前に飲めることはなかなかうれしい。
46度と微妙な度数にはわけがある。飲んでいただくとわかると思う。

取材を終えアバディーンからロンドンへと向かった。
 

(注)これまでウィスキーのことを色々書いてきたが、毎晩のようにバーに通い、さまざまなシングルモルトとか

ブランデーを飲んでいる私は普通の人よりは若干マニアックである。
バーとか葉巻仲間では当たり前に使っている言葉、たとえばボトラーとか現行物とかの用語はもしかすると一般的にはなじみがないと思う。
今後は少しずつ用語の解説を入れていきたいと考えている。
とは言え私は素人の愛飲家であるので、わからないことが多い。
知人のバーテンダーや書籍で調べてみたい。
ウィスキー関係では間違った知識を平然と書いているコミックやエッセイが多い。
私はなるべく正確に記載したく考えている。
 

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